顎関節症の主な症状は、顎の痛みや、口が開けにくくなること、そして、顎が鳴ることの3つです。一つの原因として、歯並びの悪さが上げられますが、その一方で、歯並びとの直接的な関係は少ないという研究報告もあります。
ですから、顎関節症=歯並びの悪さが原因といった先入観を持ってしまうと、余計な治療をしてしまう可能性もあります。まずは治療法を頭に入れておき、歯科医師と相談しながら、主な原因となる生活習慣を改めることから始めるのが得策と言えます。
この記事の目次
1.顎関節症の主な治療法
顎関節症の治療は、主に下記の4つが上げられます。顎の痛みや不具合は、日常生活上かなり不快なものですし、すぐにでも直したいという思いがあるはずですが、どんな治療法が適しているのか、慎重に選ぶべきです。
- 歯の治療
- 顎の治療
- 整体的な治療
- 生活習慣の改善
1-1 歯の治療
虫歯があったり、噛み合わせが悪かったりして、片側の顎だけで咀嚼する習慣があると、顎の片側に負担がかかり、顎関節症になるケースがあります。この場合は、虫歯を治療したり、左右均等に噛めるように歯を削ったり、あるいは歯の低い部分を、被せ物で高くするといった治療法があります。
1-2 顎の治療
主に、現状を悪化させない保存療法と、顎関節の手術といった直接的な方法があります。
保存療法
保存療法では、マウスピースを使って、顎が安定する位置を保つ方法や、ホットパックを使って顎関節を温め、その緊張を和らげる方法などがあります。
直接的な手術
直接的な手術としては、関節腔洗浄法や関節鏡手術があります。関節は関節腔に包まれており、関節液が関節を動かす潤滑剤の役割を果たしています。
関節腔に生理食塩水を注入して、関節内を洗浄し、関節液の循環を促すのが関節腔洗浄法です。顎関節を最小限に切開して、関節鏡という器具で顎の状態を確かめ、治療を行うのが関節鏡手術です。
1-3 整体的な治療
顎関節のずれを正して、咀嚼するための筋肉が正常に働くようにするのが、整体的な治療です。顎関節の歪みは、首や肩、背骨などの歪みに起因している場合も多いので、その際は、全身の歪みを整える整体的な治療もあります。
1-4 生活習慣の改善
顎関節症は、食いしばりや歯ぎしりの癖、偏った咀嚼、姿勢や寝相といった悪い生活習慣が大きな原因と言われています。こうした習慣がないかを見直し、悪い癖を解消するようセルフケアをすることも、一つの治療法となります。
2.早急な直接的治療は要注意!
アメリカ口腔顔面痛学会(AAOP)がまとめた顎関節症の研究では、放置していても、3分の1の患者さんは、自然に症状がなくなってくるという報告もあります。
従って、一時的に痛みが酷いからといって、すぐに歯の治療や関節の手術を施すというのは、早急といえます。
2-1 噛み合わせと顎関節症の関係
同学会の研究では、噛み合わせと顎関節症には、直接的な関係性が少ないという報告もあります。噛み合わせが悪いことによって、顎の負担に偏りが生じることもあるでしょう。
しかし、噛み合わせが悪くても、顎関節症にならない人が多いのも事実なのです。
顎自体に歪みがある状態で、歯の噛み合わせを直してしまうと、逆に顎の歪みが定着してしまう可能性もあるのです。
2-2 生活習慣の改善が治療の基本
顎関節症は、単一の原因ではなく、複合的な要因が積み重なって、症状が現れるというのが、同学会の一つの見解です。噛み合わせが悪くても、歯が接触するのは、咀嚼時の限られた時間だけです。
むしろ、食事以外にいつも歯が接触していたり、食いしばってしまったりという、顎に負担がかかる日常的な癖が問題です。さらに、そこには普段の姿勢や寝る時の姿勢なども関わってきます。
まずは、保存療法で痛みを軽減しつつ、生活習慣の改善に努めるのが、治療の第一歩です。
2-3 難治性顎関節症について
保存療法や生活習慣の改善によって、顎関節症のほとんどは改善されますが、難治性の顎関節症もあります。
痛みや違和感が長期間に及んでいる方、さまざまな医療機関を転々としている方は、顎関節症の専門医のいる医療機関で、診察を受けるべきでしょう。
3.顎関節症はどこで診てもらう?
- 口腔外科のある歯科医院
- 顎関節症専門の治療科
- 整体医院
顎関節症の治療を相談するなら、歯医者さんが基本ですが、歯科口腔外科のある歯医者さんであることが、選ぶ一つのポイントとなります。
ホームページなどで、特に顎関節症に力を入れている医院や、専門性の高さなどを把握できる歯医者さんもあります。
顎関節症を専門とする治療科もあるので、医者を転々として、慢性的になかなか直らないといった難治性の顎関節症の方は、こうしたところに相談するのも良いでしょう。
また、整体医院の中には、顎関節症の治療にも症例があり難治性の患者さんが受診していることもあります。
4.まとめ
顎関節症の原因は様々で、複合的な要因が重なっているケースでは、何か一つを直せば、すぐ解消するという単純なものではないと言えます。
歯並びを整えたり、外科的手術など、いろいろ試したにもかかわらず、なかなか改善されないという人もいます。
結論を急がず、顎関節症専門の治療科など、症状の原因を総合的に判断できる医療機関で、相談することが肝心です。
歯ぎしり同様に新しい療法にボトックスやヒアルロン酸等を用いた治療法が効果的となっております。
執筆者:
歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。