指しゃぶりの癖があると、出っ歯などの不正咬合を引き起こすことがある、と言われています。「指をくわえるだけで歯が動く」というのはにわかに信じがたい話ですが、実際、指・舌などの圧力でも歯列に影響が出ることがわかっています。
こちらの記事では、「指しゃぶりと出っ歯の関係」を解説した上で、「不正咬合を予防するために、どうするべきか」まで踏みこんでいきたいと思います。
この記事の目次
1.指しゃぶりが出っ歯の原因になるって本当?
日本小児歯科学会の「小児科と小児歯科の保健検討委員会」が発表した内容によると、3歳児の1~2割が「指しゃぶり」の習慣を持っているようです。東京都内での調査では、1歳2か月児の28.5%、1歳6か月児の28.9%、2歳児の21.6%、3歳児の20.9%に指しゃぶりの習慣が見られました。さらに、山形県内の3歳児健診に訪れた3歳児では、地域による差があるものの12.9~19.4%に指しゃぶりの習慣が認められました。
1-1 指しゃぶりと出っ歯の相関関係
同じく、日本小児歯科学会「小児科と小児歯科の保健検討委員会」の発表によれば、「指しゃぶりをする2歳児」には高い確率で上顎前突(出っ歯)が見られました。5歳児になると、「指しゃぶりをする子供が上顎前突である確率」はさらに高まったとのことです。
この調査結果を踏まえると、「指しゃぶりと出っ歯に相関関係が認められる」という認識には十分な根拠があるように思えます。出っ歯のほか、開咬(噛み合わせた状態でも、上下の前歯に隙間がある状態)、片側性交差咬合(上下の奥歯が左右にずれていて噛みあわない状態)の原因になることもわかっています。
1-2 おしゃぶりも不正咬合の要因になる
同様に、おしゃぶりも不正咬合の要因になることがわかっています。ただ、おしゃぶりの場合は上顎前突よりも、開咬を引き起こす確率が高いようです。ただ、2歳頃までにおしゃぶりの使用をやめれば、発育につれて噛み合わせ・歯列は整っていく傾向があります。よって、噛み合わせに大きな問題を生じやすいのは、「3歳を過ぎてもおしゃぶりの使用を続けている場合」ということになります。
2歳~2歳半というのは、乳歯が生えそろう時期に相当します。この時期までにおしゃぶりをやめられるかどうか…が、噛み合わせ・歯列に大きな影響を与えるわけです。となると、指しゃぶりに関しても「3歳までにやめられるかどうか」が重要な意味を帯びてくると考えるべきでしょう。
2.指しゃぶりに対する考え方をどうするか?
実のところ、指しゃぶり自体を「悪習慣」を断じるのは間違っています。問題は、やめるべき時期にやめられるかどうか…です。「3歳を過ぎて指しゃぶりをしている場合に不正咬合を起こしやすい」という事実から、「3歳を過ぎる頃までに指しゃぶりの習慣をなくすこと」が不正咬合を予防するために重要なポイントとなります。
2-1 乳幼児期までの指しゃぶりは、生きるための訓練
母親の胎内にいる胎児は、14週目あたりから指をくわえる動作をするようになり、24週目あたりで指を吸うようになります。これは母乳を吸うための訓練になっているわけで、「指しゃぶりが生きるために必要な本能である」という事実を示唆します。
また、生まれたばかりの乳児は、さまざまなものを口に入れ、無意識のうちに形状を学習していきます。このような学習を通じて、乳児は「目で見た形状」と「触れたときの形状」を頭の中で一致させていくわけです。きちんと学習するから「すべすべした見た目の物質」が触ったとき実際にすべすべしているはずだ…といった認識能力を得られるのです。
何かを無意識に口にくわえ、吸引する動作にも、きちんと意味があります。この段階で、指しゃぶりを問題視したり、やめさせたりするのは、むしろ正常な発達を妨げる恐れがあるでしょう。
2-2 昼間の指しゃぶりが、2歳頃までに減少するかどうか
オモチャを手に持って遊ぶ年齢になると、自然と指しゃぶりは減少します。眠いとき(眠っているとき)、退屈なときに指しゃぶりをすることはありますが、起きて活動しているときにはしなくなります。1~2歳の段階になっても、一日中、ずっと指しゃぶりをしているようなら、注意深く経過を見る必要が出てくるでしょう。
2-3 基本的に3歳を超えると指しゃぶりは急激に減る
保育園・幼稚園などに入る3歳頃は、母子分離が可能になる時期です。友達と駆け回ったりするうち、自然と指しゃぶりをしなくなるのが普通です。この時期に入っても、なお頻繁な指しゃぶりが見られる場合は、小児科・小児歯科・臨床心理士などに相談して、具体的な対応を考えたほうが良いでしょう。
また、保護者としても、子どもを退屈させないようたくさん話しかける習慣をつけるようにしてください。話しているときは指をしゃぶれませんから、親子間で十分な会話をすることは非常に有用です。子供の手を握る、子供と一緒に遊ぶなど、常に「何か楽しいことをするために手を使っている状態」を保ってあげてください。そうすれば、自然と指しゃぶりの習慣はなくなっていくはずです。
3.まとめ
指しゃぶりが「出っ歯」の原因になることは、日本小児歯科学会の発表からも証明されていると考えて良いでしょう。ただ、3歳を過ぎるまでに指しゃぶりの習慣を減らしていくことができれば、徐々に正常な噛み合わせへと戻っていく確率が高いので、過度に心配する必要はありません。「3歳以降に指しゃぶりをやめられそうかどうか」を確認しながら、あたたかく成長を見守ってあげてください。
無理やり止めさせるのではなく、親とのスキンシップが大切だと思います!
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