【教授に聞く】口腔感染症とは!虫歯や歯周病も口腔感染症?

【教授に聞く】口腔感染症とは!虫歯や歯周病も口腔感染症?

口腔感染症(こうくうかんせんしょう)とは、どういった症状を指す名前なのでしょうか。口腔粘膜疾患(こうくうねんまくしっかん)とは違うものなのでしょうか。

呼び方によって何が違うのかを、鶴見大学・歯学部・口腔内科学講座・里村一人(さとむらかずひと)教授に伺いました。

またインタビューから、よく耳にする病気も口腔感染症であることが分かりました。

※前回の記事「口腔癌(がん)とは!原因や前兆、早期発見に必要なこと、治療の流れまでを徹底解説

この記事の目次

口腔感染症とは? 常在菌がいるだけでは感染ではないのか…

里村一人教授

Q1.どういう症状が口腔感染症と呼ばれているのでしょうか?

感染症とは、細菌やウイルス、その他の病原微生物が身体に入り込んで感染を成立させ、それに対して身体が反応し、炎症などが起こっている状態です。これが口腔内に起こった場合を口腔感染症とよびます。

ただし、口内には常在菌と呼ばれる細菌が数多くいますよね。この常在菌は、基本は口腔内にいるだけでは悪さをしません。つまり、常在菌が口腔内にいても、身体が反応して熱が出たり、痛みが出たり、炎症が起こったりしていない限りは、口腔感染症とは呼ばれません。

一方、口腔粘膜に何らかの症状が現れるものを総称して口腔粘膜疾患と呼んでいます。

例えばヘルペス性口内炎の場合、口腔粘膜に症状が出ているという意味からは口腔粘膜疾患です。また、ヘルペスウイルスというウイルスが人の身体の中に入って感染し、その反応として口内炎という症状が出ているという点からみれば、これは口腔感染症ということができます。

つまり、口腔粘膜疾患と口腔感染症はもともと別々の概念を指すものですが、口腔粘膜に症状を持つ口腔粘膜疾患の中で、ウイルスなり細菌なりの感染が原因になっているものは、同時に口腔感染症という扱い方をされるわけです。

虫歯も歯周病も口腔感染症?

Q2.細菌が原因と聞く虫歯も口腔感染症と呼ぶことができますか?

虫歯は、ミュータンス菌などといった、いわゆる虫歯菌が歯の表面で繁殖して、歯を溶かしてしまう病気ですから、口腔感染症と呼ぶことができます。

また、親知らず(智歯)が生えてきた場合、親知らずの部分をうまく歯磨きすることができないなどして、不潔な状態が続いてしまうと、その周囲に口腔内の細菌が感染して痛みや腫れなどの炎症が起こってしまった場合を智歯周囲炎と呼びますが、これも口腔感染症の一つということができます。

ほかには歯周病。これは歯周病菌が歯肉溝(しにくこう)と呼ばれる歯と歯茎の間の狭い隙間で繁殖、感染して、歯茎が腫れて出血したり、歯を支えている歯槽骨(しそうこつ)がどんどんなくなって、歯が動揺し、ついには抜けてしまう病気ですね。

この歯周病も歯周病菌と総称される細菌の感染が原因になっているので、口腔感染症ということになります。とくにこの歯周病は、動脈硬化や糖尿病などの全身疾患の原因となったり、それらを悪化させたりすることが明らかとなっています。

このことから、全身の健康を守るためにも、是非定期的に歯科医院を訪れていただきたいと思います。

※次の記事「唾液をつくる唾液腺に起こる疾患とは!唾液腺疾患の種類や“すぐ歯科医院を受診した方がいい前兆”について解説

鶴見大学 歯学部 口腔内科学講座
里村一人教授監修
経歴・プロフィール

昭和63年3月:徳島大学歯学部卒業
昭和63年4月:徳島大学大学院歯学研究科(口腔外科学第一講座)入学
平成4年3月:徳島大学大学院歯学研究科修了 学位取得【博士(歯学)】
平成4年4月:徳島大学助手歯学部(口腔外科学第一講座)
平成7年1月:米国国立衛生研究所 (NIH, National Institute of Dental and Craniofacial Research) Visiting Fellow (長期出張)
平成13年7月:徳島大学講師歯学部附属病院(第一口腔外科)
平成15年10月:徳島大学講師医学部・歯学部附属病院(歯科口腔外科)
平成17年1月:徳島大学准教授大学院ヘルスバイオサイエンス研究部(口腔顎顔面外科学分野)
平成21年4月:鶴見大学歯学部教授(口腔内科学講座)
平成28年4月:鶴見大学歯学部長(併任) ※平成31年3月まで
平成31年4月:鶴見大学副学長(併任)
現在に至る

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執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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