前回に引き続き、「国境の医療者」(新泉社)の共同著者である田畑彩生氏にインタビュー。今回は日本とタイとで違う、歯科矯正に対する文化の違いについてお話を伺いしました。
タイの歯科治療は見た目が重要!
日本で歯医者さんに通うのは、虫歯になってしまったり、歯が欠けてしまったりしたときが多いと思います。ですが、タイでは治療もそうですが「見栄えを良くするため」「美容のため」に矯正治療に通う人がとても多いです。
タイはとても見た目を重視する文化で、70代~80代の方でも、白く整った歯の方もいらっしゃいますよ。
日本だと健康な自分の歯はなるべく残す風潮ですが、タイですと見た目を重視して、あえて残っている自分の歯を全部抜いて総入れ歯にする方なんかもいらっしゃいます。
美容のための治療の中でも歯列矯正を行うことが社会的ステータスを表す“アイコン”の一つになっていて、若いうちから率先して歯列矯正を行っていることを発見しました。
矯正器具もファッショアイテムのひとつ!
日本ですと裏側矯正や透明のマウスピースなど目立たない矯正方法が好まれ、歯列矯正をしていることを公にアピールすることはあまり望まれませんよね。
タイでは歯列矯正に対する考えが大きく違っていて、矯正器具はファッションの一部として親しまれていました。アクセサリー感覚で、ワイヤーやブレスをできるだけカラフルで派手な色を好んで装着していたりするんです。
ファッション性を重視するあまりフェイク矯正器具もある!
日本で歯列矯正を行う場合ですと保険適用外なので高額な治療費がかかってしまいます。タイで歯列矯正を行う場合でも、日本ほどではありませんが治療費は安くはありません。
そのため、お金がなくて正規の矯正治療を受けられない若者向けに、口にはめるタイプのフェイクブレスやフェイクリテーナー(矯正器具のように見えるアクセサリー)がマーケットで売られていたり(※)、ハンドメイドのフェイクブレスの作り方が動画投稿サイトに投稿されていたりもします。それだけ、国民のあいだで矯正器具でおしゃれをすることが浸透しているということですね。
(※)リスクの問題から、2010年9月からはフェイクブレスの輸入・製造・販売は禁止になっています。
まとめ
田畑氏に日本とタイでの歯列矯正に対する文化の違いを伺いました。タイをはじめ、海外では歯列矯正が身近なものとして浸透しているようです。
歯列矯正を行うことで、口を開けたときの見た目が良くなるだけでなく、正しい噛み合わせになることで口腔内のストレス軽減も期待できます。少しでも歯列矯正に興味がある人は、まずは近くの歯医者さんに相談してみるのもいいかもしれません。
プロフィール
田畑彩生
1983年生まれ。京都大学医学部卒業。看護師、保健師。
保健医療ボランティアとして、2012年~2014年にメータオ・クリニックに赴任。
任期終了後もデング熱地域予防啓発活動に努め、タイの移民居住区や移民居住スラム地区への定期訪問をするなどの福祉活動を精力的に行う。
共同著書である「国境の医療者」(新泉社)を2019年4月20日に発行。
現在はボランティアとしてベトナム・マレーシアでも活動中。
※著書クレジット:「国境の医療者」(新泉社)、(C)2019 Maung Maung Tinn, STILL on the border
執筆者:
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