タイ・ミャンマー国境の町で無償診療を行い、難民・移民と交流してきた日本の医療従事者のことばをつづった「国境の医療者」(新泉社)。その共同著者である田畑彩生氏にお話を伺いました。
田畑氏はタイ・ミャンマーの主要な医療機関として知られるメータオ・クリニックに赴任し、デング熱感染症対策や学校保健活動などに貢献してきた方です。
今回は、田畑氏が見た現地特有の食生活や口腔ケア、歯の悩みについて語ってもらいました。
この記事の目次
子供も大人も無意識に予防!?虫歯になりづらい食生活
これはミャンマーのジャングルのような地域で生活をされている方々の話ですが、虫歯になりづらい環境なんです。まず糖分をほとんど取らない。
清涼飲料水など商業的な製品の販売店が少なく、甘い飲み物に接する機会が少ない為、甘いドリンクを飲む機会が少ないのです。そのため虫歯へのリスクも当然減りますよね。
そして食事が大切で、生野菜などをよくかんで食べていました。これは子供から大人まで共通で、小さい子供でもそうしているんです。そのため骨格も丈夫に育っていきますよね。
乳離れと同時に大人の食事!?成長の早い乳歯
乳離れと同時に大人の食事をするのは乳児の離乳移行時に、形態の異なる離乳食を与えるという栄養教育が充実していないためです。
また、母親の栄養状態により母乳が出ずらくなるため、必要にかられ早い段階で大人の食事形態へ移行する事が多いです。
そのため歯の生え方が早く、1歳で生えそろっていることもありました。
田畑さんも実践!驚きの歯磨き方法
そのような虫歯になりにくい環境だからこそできる口内ケアがありました。“炭磨き”には驚きましたね。ご飯を炊くために使った炭を、歯に塗って指で磨くんです。
そこに滞在していたときは、私もならって炭磨きを実践していました(笑)。デンタルグッズを使用したケアのように口内環境を維持できるわけではありませんが、生活の知恵として活用しているようです。
健康な口内環境にも起こる!?日本と共通の悩み
親知らずは生えてきてしまうんです。いくら骨格がよくても生え方が悪かったりしたら、違和感や痛みが出てしまいますよね。そういった方は病院にいらしていました。
虫歯になられた方の中には、自分で抜歯してしまっているという方もいましたよ(笑)。
まとめ
日本で生活している中では想像できない食生活や口腔ケアでした。甘い物を取らないことや炭磨きなどは、なかなかまねをすることはできませんが、よくかんで食べるということはお手本にできそうです。ミャンマーのジャングル地帯で生活している方々の口内事情でした。
プロフィール
田畑彩生
1983年生まれ。京都大学医学部卒業。看護師、保健師。
保健医療ボランティアとして、2012年~2014年にメータオ・クリニックに赴任。
任期終了後もデング熱地域予防啓発活動に努め、タイの移民居住区や移民居住スラム地区への定期訪問をするなどの福祉活動を精力的に行う。
共同著書である「国境の医療者」(新泉社)を2019年4月20日に発行。
現在はボランティアとしてベトナム・マレーシアでも活動中。
※著書クレジット:「国境の医療者」(新泉社)、(C)2019 Maung Maung Tinn, STILL on the border
執筆者:
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