歯茎の炎症が悪化すると化膿(かのう)してしまうことがあります。腫れたところが白くなっていたり、酸味や臭いを感じたりする場合、膿(うみ)が溜まっていることが考えられます。
この記事では、歯茎に膿が溜まったときの応急処置や控えた方がいいこと、歯茎に膿が溜まる原因、歯医者さんでの治療法などを紹介しています。放置すると悪化してしまう恐れがあるため、なるべく早く歯医者さんを受診しましょう。
この記事の目次
1.歯茎が膿んだときの応急処置と控えたいこと
「歯茎が腫れて液体が出てくる」という場合、患部が膿んでいる恐れがあります。
できるだけ早く歯医者さんを受診することが大切ですが、何らかの事情ですぐに受診できない場合もあります。
化膿している恐れがある歯茎の状態、膿が溜まっているときの応急処置、控えた方がいいことを紹介します。
1-1 化膿している恐れがある歯茎とは
膿は「細菌と戦った白血球の死骸」「細菌の死骸」「生存している細菌」などが混じった液体です。
膿が出ているということは、炎症が悪化して化膿したことが考えられます。
歯茎の腫れに加えて、以下のような症状が見られる場合、化膿している確率が高いです。
白っぽいデキモノがある
歯茎(主は歯の根元付近)に白っぽいデキモノがあり、そこから白色や黄色といった液体が出ているようなら、歯茎の内部が化膿しているかもしれません。
白っぽいデキモノは「サイナストラクト」と呼ばれる、歯茎の内部に溜まった膿を排出するための穴です。
【関連記事】歯茎の腫れに要注意!白いデキモノの原因・治療法まとめ
酸味があり、口臭が悪化している
膿はやや酸味を持っているので、膿が出ていると口の中が酸っぱく感じられます。
また、膿による口臭が出ます。腫れている部位に酸味を感じたり、口の中が臭っていたりしたら、化膿している恐れがあります。
歯が浮くような感覚、圧迫されるような痛みがある
歯茎の内部に膿が溜まると、歯が浮くように感じられることがあります。
膿が溜まった箇所が膨れ、歯を押し上げるような圧力が生じているからです。
「歯が浮く感覚」または「内部から膨れあがるような痛みや圧力」を感じる場合、内側に膿が溜まっている恐れがあります。
1-2 歯茎に腫れや膿があるときの応急処置
歯茎が腫れたり膿が出たりしているときは、ほとんどの場合、痛みや不快感をともないます。
歯茎に腫れや膿が見られるときの応急処置を紹介します。
市販の鎮痛剤を服用する
歯茎が腫れて痛みがあり、すぐに歯医者さんに行けない場合、市販の鎮痛剤で痛みを抑えましょう。
歯医者さんで処方される鎮痛剤にも含まれる、ロキソプロフェンを主成分とする鎮痛剤がおすすめです。
鎮痛剤は、服用してから効き目が出るまで30分ほどかかることがあります。
用法用量を守って使いましょう。
うがい薬で口の中を清潔にする
腫れや膿がある場合、口の中で細菌が増殖しています。
殺菌・消毒作用のあるうがい薬で口の中をゆすぎ、細菌を減らしましょう。
ただし、アルコールが入ったうがい薬は刺激が強すぎる恐れがあるため、ノンアルコールや低刺激性のものを選びましょう。
クロルヘキシジンを主成分とするうがい薬は、歯周病を軽減・予防する作用もあるので、口の中の殺菌や消毒に向いています。
クロルヘキシジンを用いたうがい薬がすぐに入手できない場合は、一般的なうがい薬を使いましょう。
1-3 控えた方がいいこと
歯茎に腫れや膿が見られるとき、症状を悪化させないためにも次のことは控えましょう。
針などで突いて膿を出す
膿が溜まっている部分を針などで突いて、自分で膿を出すことは避けましょう。
化膿している部位は細菌が多数存在し不衛生です。
針などで傷つけることで、今度は傷口が感染してしまうかもしれません。
運動や入浴で血行を促進する
痛みが強い場合、「激しい運動」や「体を温める」といった行為はできるだけ控えましょう。
血行が良くなると、痛みが強くなる傾向があります。
なるべく安静にしているよう心がけるとともに、長時間の入浴や熱めのシャワーなどは控えるのがよいでしょう。
2.歯茎に膿が溜まる原因と治療法
歯茎に膿が溜まる原因はいくつかあり、それぞれ治療法が異なります。
歯茎が化膿する主な原因と、歯医者さんでの治療法を紹介します。
2-1 歯の根に炎症が起こり、膿が溜まっている
神経を抜いた歯や、神経が死んでしまった歯の根の部分に、炎症が起こることがあります。
歯髄腔(しずいくう=神経が入っていた空間)が細菌に感染し、炎症が根の部分に拡大することがあるためです。
炎症が悪化したり長期化したりすれば、歯の根が化膿し、歯茎に膿が溜まることがあります。
歯の根に炎症が起きた状態を「根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)」と呼びます。
◆治療法
歯の細菌に感染している部分を削り、歯髄腔や歯の根の内部を洗浄・消毒して無菌化する「感染根管治療」が第一選択となります。
無菌化したら、薬剤を詰めて根の炎症の消炎を目指します。
症状によっては、「歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)」と呼ばれる処置をおこなうこともあります。
歯茎を切り開いて膿を出し、歯の根を1~2mmほど切除して薬剤を詰め、根の内部を無菌化してから歯茎を縫合する方法です。
歯根端切除術でも無菌化できないケースでは、抜歯になることがあります。
2-2 口の中の外傷が炎症を起こし、化膿している
歯ブラシでゴシゴシ磨いたり、魚の小骨が刺さったりといった原因で、歯茎に傷ができることがあります。
傷口が細菌に感染すると炎症を起こし、悪化すると化膿して膿が出ることがあります。
◆治療法
魚の小骨などがある場合は取り除き、膿を排出してから患部を洗浄・消毒します。
大きく腫れている場合、歯茎を切開して内部に溜まっている膿を排出することもあります。
症状に応じて、鎮痛剤や抗炎症剤などを併用することがあります。
2-3 歯の根が折れ、内部に細菌が入っている
外傷や強い力が加わるといった原因で、歯の根が割れたり折れたりしてしまうことがあります。
「歯根破折(しこんはせつ)」と呼びます。
歯茎に埋まっている根の部分まで割れてしまうと、割れ目から細菌が入りこみ、歯茎の内側まで感染することがあります。
◆治療法
歯の割れ方や折れ方を確認し、膿を排出して患部を洗浄・消毒した後、歯の修復を試みます。
割れ方や折れ方によっては歯を保存できることもありますが、修復が難しい場合は抜歯になることもあります。
2-4 歯周病が原因で炎症が起こっている
歯周病は「歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)」に歯石が溜まることで発症します。
ほとんどは自覚症状のないまま進行し、悪化すると歯を支える骨が溶けてしまうこともあります。
歯周病が進行する過程で急性の炎症を起こすケースがあり、その場合は歯茎が腫れて化膿することがあります。
◆治療法
歯周病が原因であれば、「スケーリング」「ルートプレーニング」といった、歯周ポケットの歯石を取り除く処置をおこなうことがベーシックです。
炎症がひどい場合は、鎮痛消炎剤や抗生物質で炎症を鎮(しず)めてから、歯周病の治療に入ることもあります。
3.まとめ
歯茎の炎症が悪化すると、化膿して口臭の元になることがあります。
化膿した箇所は自然治癒することもありますが、放置することでさらに悪化するケースも少なくありません。
膿が出る、痛みがあるといった場合、なるべく早く歯医者さんを受診しましょう。
根尖病変・歯根破折・歯周病などは、歯を失うリスクもある口腔トラブルです。
できれば歯医者さんで定期検診を受け、口腔トラブルを未然に防ぐようにしましょう。
併せて、毎日の歯磨きといったケアを丁寧におこない、口の中を衛生的に保ちましょう。
歯医者さんとして正直なことを言えば歯茎から膿が出てきたときは若干の手遅れ感があります。少しでも早く歯科に通院して精査をしてもらうことを強くお勧めいたします。その中で、歯茎から膿が出る場合に歯の生え際からの膿は歯周病系、歯茎の硬いところから膿が出る場合には歯の中、根の先にトラブルが起きていることが多いです。口臭の原因にもなりますからしっかりと治療してください。
執筆者:
歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。