噛み合わせが深いとどんな問題がある?過蓋咬合・下顎後退によるトラブル

噛み合わせが深いとどんな問題がある?過蓋咬合・下顎後退によるトラブル

上下の歯を噛み合わせたとき、「上の前歯が、下の前歯をほとんど覆い隠している状態」になっていませんか? このような状態を指して、「噛み合わせが深い」と表現します。噛み合わせが過剰に深いと、さまざまな口腔トラブルの要因になります。

こちらの記事では、「過剰に深い噛み合わせがもたらす口腔トラブルの種類」を解説しています。もちろん、「正常な噛み合わせを取り戻すための治療法」にも言及していますので、治療法を選択する上で参考にしていただければ幸いです。

この記事の目次

1.「噛み合わせが深い」とは、どういうことか?

正常時、口の中は「上の前歯が、下の前歯に覆いかぶさる噛み合わせ(鋏状咬合)」になっています。だいたい、上の歯が1.5mmほど覆いかぶさるのが正常です。毛抜きのように「歯の先端がぴったり当たる噛み合わせ(鉗子状咬合)」は、正常とはされません。

ただし、奥歯は上下がぴったり接触する鉗子状咬合が正常です。つまり、「前歯が鋏状咬合、奥歯が鉗子状咬合」という状態が望ましいわけです。

しかしながら、何事にも「適正範囲」というものがあります。「上の前歯が、下の前歯をほとんど覆い隠している状態」は、明らかに鋏状咬合の適正範囲を逸脱しています。ここまで深い噛み合わせは、口腔トラブルのリスクファクターです。

さて、「過剰に深い噛み合わせ」には2種類の原因が存在します。1つは「歯並びの問題(不正歯列)」の一種として噛み合わせが深くなっているケースです。そして、もう1つは歯科治療をきっかけとして噛み合わせが深くなるものです。まずは、それぞれのメカニズムを確認することにしましょう。

1-1 不正歯列で噛み合わせが深い~過蓋咬合(かがいこうごう)

噛み合わせが深い歯並びのことを「過蓋咬合」と呼んでいます。別名で「ディープバイト」と呼称することもあります。歯並びの悪化を意識的に防ぐのは難しいですが、せっかくなので「過蓋咬合になる原因」をいくつか紹介することにします。

◆奥歯の高さが足りない
奥歯の高さが不足していると、過蓋咬合の原因になります。奥歯が低いぶん、噛み合わせの位置が深くなり、結果的に前歯が過剰に噛み合ってしまうわけです。

◆上前歯が大きいor下前歯が内側に傾いている
上前歯が長く伸びていたり、下前歯が内側に傾いていたりすると、前歯の噛み合わせが深くなります。

◆下顎の骨格が、上顎に対して小さい
「上顎が大きく発達しているのに対し、下顎が小さい状態」だと、上前歯が下前歯を覆い隠すような噛み合わせになりがちです。同様に、下顎の関節が後方に寄っている場合も、噛み合わせが深くなりやすいです。

◆頰づえ・指しゃぶりなどの悪習慣
歯は、同じ方向から継続的に力がかかると移動してしまいます。そのため、頰づえ・指しゃぶりなどが習慣化していると、歯並びに悪影響が出ることがあるのです。

1-2 歯科治療がきっかけで噛み合わせが深い~下顎後退

歯科治療がきっかけで噛み合わせが深くなることを「下顎後退」といいます。これは、奥歯を治療したとき、「高さの足りないかぶせ物」を入れたことに起因します。1本、2本の奥歯が高さ不足になっただけなら大きな影響はありませんが、多数の奥歯が高さ不足になると問題が生じます。

奥歯が低くなったことで噛み合わせが深くなり、過蓋咬合と同じような状態になってしまうのです。奥歯が低くなったぶん、前歯が過剰に噛み合うからです。

2.「噛み合わせが深い状態」では、どのような問題が起こるのか?

それでは、次に「過剰に深い噛み合わせがもたらす口腔トラブル」を紹介することにしましょう。過蓋咬合(または下顎後退)の状態になっていると、どのような問題が発生するのでしょうか?

2-1 口内炎・外傷の要因になる

過蓋咬合になっていると、「下の前歯」が「上の歯茎」に接触する場合があります。結果、歯茎に外傷を負ったり、慢性的刺激による口内炎が頻発したり…といったリスクが生じるのです。

2-2 上顎前突を誘発する

上顎前突は、世間一般でいうところの「出っ歯」のことです。過蓋咬合では、「下の前歯」が「上の前歯」を突き上げる状態になる場合があります。結果、「上の前歯」が前方に押され、上顎前突を誘発するわけです。過蓋咬合が別の不正歯列を誘発して、次第に歯列全体が大きく乱れる恐れがあります。

2-3 義歯・補綴物(ほてつぶつ)が壊れやすくなる

過蓋咬合では、上下の歯が正しく噛み合っていません。そのため、歯に「違う向きの圧力」がかかりやすくなります。義歯・補綴物(詰め物・かぶせ物)に無理な力が加わり、割れたり脱落したりする確率が上がるのです。

2-4 歯周病リスクが増大する

さらに、過蓋咬合だと、前歯はまともに噛み合っていません。すると、奥歯に噛み合わせの圧力が集中します。過度な圧力がかかると、歯は根元から揺さぶられるような状況になります。すると、「歯根と歯茎の隙間(歯周ポケット)が拡大して歯周病の進行が早まるのです。

2-5 顎関節症の発症率が上がる

「下の前歯」が「上の前歯」の内側に押しこめられているので、だんだんと下顎全体が後方に移動していきます。結果、顎関節が圧迫されて、顎関節症を発症することがあります。

3.「深い噛み合わせ」の治療方法は?

「噛み合わせが深すぎる…」と感じた場合、どのような治療方法が採られるのでしょうか? この章では「深すぎる噛み合わせを改善する方法」について解説したいと思います。

3-1 歯列矯正

過蓋咬合の場合、第一選択は歯列矯正になると思います。歯にブラケットを装着してワイヤーで引っ張る「ワイヤー矯正」が基本的ですが、軽度の過蓋咬合ならマウスピース矯正で整えられる可能性もあるでしょう。

3-2 バイトプレート

乳歯と永久歯が混在している「混合歯列期」なら、バイトプレートによって過蓋咬合を防ぐことができます。奥歯をより長く伸ばすための矯正装置です。奥歯の高さを作れば、噛み合わせが過剰に深くなるのを避けられます。

3-3 噛み合わせ調整

下顎後退の場合、噛み合わせ調整で悩みを解消できる可能性が高いです。高さ不足の詰め物・かぶせ物を調整し、高さを維持します。

4.まとめ

噛み合わせが深いと、さまざまな口腔トラブルが誘発されます。過蓋咬合・下顎後退のいずれの場合でも、適した治療すれば悩みは解消するはずです。「噛み合わせがおかしいのかな…?」と思ったら、近場の矯正歯科に相談してみると良いでしょう。

 

先生からのコメント

近場の矯正歯科に相談するのも良いですが、まずはかかりつけの歯科医院で相談して、一般の矯正歯科、大学病院などを紹介してもらいましょう!

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電話:03-3601-7051
執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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