抜歯後、抜いた跡にできた血餅が取れないようにすることが重要!

重度の虫歯、横向きの親知らずは、抜歯になることがあります。皆さんは「抜歯したとき、注意するべきことは何か」を知っていますか?

それは「血餅(けっぺい)が取れないようにすること」です。

とはいえ「血餅とは何か」「抜歯後いつできるのか」「痛いのか」など詳しく知らない人も多いと思います。この記事では、血餅の基礎知識から血餅が取れないようにするために気をつけることまで、ポイントを絞って解説します。

この記事の目次

1.抜歯対象になる「重度虫歯」「斜め・横向き親知らず」

歯科治療における第一目標は「歯を救い、保存すること」です。しかしながら、すべての歯を救うことはできません。次のような「存在することで、周囲の歯や歯周組織に悪影響が及ぶ恐れがある」と判断された歯は、抜歯となることがあります。

1-1 「C4:残根」まで進行した虫歯

「C4」は虫歯菌によって神経が死んでしまい、内部が菌の巣窟となった虫歯です。神経・血管の通り道である「根管」も虫歯菌に侵されており、保存できる確率が低くなります。

歯の内部を無菌化するのが困難であり、放置すると周囲に細菌をまき散らす「感染源」となる恐れがあるため、抜歯となることがあります。

1-2 斜め・横向きに生えてきた「親知らず」

斜め・横向きに生えた親知らずも、周囲の歯に悪影響をおよぼすことがあります。歯ブラシが届きにくい場所ができて細菌が増殖すると「歯茎の炎症」「虫歯」を引き起こす要因になります。

さらに、隣の歯を圧迫して、全体の歯並びを悪化させてしまう場合もあります。周囲に悪影響がおよぶのを防ぐため、抜歯することがあります。

2.抜歯後にできる「血餅」とは?

抜歯した箇所は、すぐにきれいに治るわけではありません。「抜歯窩(ばっしか)」と呼ばれる傷口になり、塞(ふさ)がるまでに一定の期間を要します。基本的に、抜歯後の傷口がすべて塞がり、歯茎が元通りになるまで1カ月ほどかかると言われています。

ところで、抜歯後の傷口はどのように塞がっていくのでしょうか?

皮膚に傷を負ったなら、塞がるまでの間は「かさぶた」が傷を塞ぎます。口の中には皮膚にできるようなザラザラした「かさぶた」は形成されません。代わりに抜歯窩には「血餅(けっぺい)」が形成されます。

血餅は「血液がゼリー状にかたまったもの」で、抜歯窩を保護・修復する役割を持っています。

2-1 血餅はどのように形成される?

傷ができると「フィブリン」というタンパク質が、周囲の赤血球・白血球・血小板などをくるみこんで血餅を作ります。血餅が抜歯窩を塞ぐことが、修復の第一歩です。

ちなみに、血餅が形成されるのは口腔内だけではありません。

皮膚の傷であっても、まずは血餅が形成されます。ただし、皮膚の場合は血餅の外側で血液が凝固しザラザラした「かさぶた」ができます。そのため、表面から血餅が見えることはほとんどありません。

2-2 血餅はいつまで?

抜歯から時間が経つと、血餅の中に少しずつ毛細血管が入っていきます。それから1週間くらいで、血餅は「肉芽組織(にくげそしき)」というものに変わります。

肉芽組織は、抜歯から20日前後で「線維性結合組織」になり、周囲から上皮(歯茎)が伸びてきて、軽快に向かいます。

ただし「歯槽骨(=歯を支えている骨)」の穴が塞がるのには時間がかかるため、半年~1年ほどかかるとされています。とはいえ、歯茎の穴が塞がれば、食事などに困ることはないでしょう。

3.血餅が取れたらどうなる?

皮膚にできる「かさぶた」は表面が固まっているので、取れそうになることはあっても、取れる心配はあまりありません。

しかし、抜歯窩の血餅は脱落することがあります。また、大きいもので豆粒程度の大きさになるため、少し異物があたるだけでも取れやすく、気をつけなければなりません。

傷口を修復させるための血餅が取れたら、抜歯窩はどうなるのでしょうか?この章では「運悪く、血餅が取れた症例」について解説したいと思います。

3-1 どういう場合に血餅が取れるのか?

血餅は、日常生活におけるちょっとした刺激で外れてしまうことがあります。例えば次のような行為は、血餅が脱落する要因になることがあります。

  • ◆歯ブラシの接触
    ◆指・舌でいじる
    ◆ブクブクうがいをする
    ◆ストローで飲み物を飲む
    ◆麺類を強くすする
    ◆舌打ちをする など

直接、血餅を触るのはもちろん「うがいによる水圧」で取れてしまうこともあります。そのほか「何かを吸いこむ動作」も気をつけましょう。抜歯窩にはまった血餅を吸いだす恐れがあります。

基本的に「吸いこむ動作(=口腔内を陰圧にする動作)」は避けた方がよいでしょう。

3-2 血餅の形成を妨げる行動にも注意!

人によっては、血餅が形成されないこともあります。血液がうまく固まらなかったり、血液量が不足していたりすると、血餅の形成不全が起こるためです。血餅の形成を妨げる要因としては、以下のようなものが知られています。

  • ◆抜歯当日の飲酒・入浴・運動
    ◆ピル(経口避妊薬)の服用
    ◆抜歯当日の喫煙
    ◆抗血小板薬・抗凝固薬の服用 など

「血流を促進する行動(=血が固まるのを阻害する)」「血流を減らす行動(=血餅形成に必要な血液が足りなくなる)」は、リスクファクター(危険な要素)となります。

また「血液をサラサラにする薬」も、当然ながら血餅の形成を阻害します。

3-3 血餅が取れたら、傷口はどうなるのか?

血餅が取れた場合、抜歯窩はどのような経過をたどるのでしょうか?

傷口を塞ぐものがなくなるので、抜歯窩は「開いた穴」になります。穴は歯槽骨まで直通しています。血餅が取れた状態になった傷口を「ドライソケット」と言います。

ドライソケットは骨まで直通しているので、飲食物などがドライソケットに入りこむと、骨を刺激して激痛を覚えます。

基本は、抜歯後2~3日経つと少しずつ患部の痛みがひいてくるのですが、ドライソケットになってしまうと、逆に2~3日で痛みが大きくなります。そればかりか、痛む期間も長くなるため注意しましょう。

ドライソケットにならなければ、痛みは1週間程度で落ち着いてきます。しかし、ドライソケットになってしまうと2週間~1か月にわたって痛みが持続するとされています。

骨が刺激されるような痛みが長期間続くため、患者さんは少なからぬ苦痛を受けることになります。

こうした痛みを味わわないようにするには、抜歯後、なるべく安静にして血餅の形成を妨げる行為や、血餅が脱落しやすい行為を避けることが大切です。

ドライソケットの症状や治療法については「ドライソケットの治療法・原因を解説!抜歯後の注意点まとめ」でも詳しく解説しています。

4.まとめ

親知らずなどの抜歯後、血餅が外れると「ドライソケット」になってしまいます。修復が遅れるだけで、いずれ穴は塞がりますが、ドライソケットによる「激しい痛み」に2週間以上も耐えるという状況は、できる限り避けたいものです。

抜歯から2~3日の間は特に、傷口への刺激を避け、ドライソケットの予防に努めることが重要と言えます。

先生からのコメント

抜歯後なにかあれば、抜歯してもらった歯科医院に早めに相談してください。大学病院などで抜かれた場合は、紹介先か普段通っている歯科医院に相談してください!

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電話:03-3601-7051

執筆者:歯の教科書 編集部

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