【教授に聞く】正しいブラッシングを身につけるには!歯ブラシは「やわらかめ・ふつう・かため」どれを選ぶべき?

毎日のデンタルケアにかかせない歯ブラシですが、どんな歯ブラシを選んでいますか? 「やわらかめ・ふつう・かため」の歯ブラシから電動歯ブラシなど、さまざまな種類の歯ブラシが世の中にはあります。

また、交換のタイミングですが「2~3週間で交換している!」という方よりも「毛先が開いてから」など、数カ月使ってからを変えているという方が多いと思います。

昭和大学・歯学部・歯周病学講座・山本松男教授にインタビューを行い、歯周病を予防するためには、どのようにブラッシングをするべきか、どのような歯ブラシを選ぶべきかなどを解説していただきます。

そして、歯ブラシを交換する時期の目安についても説明していただきました。

※前回の記事「歯周病治療にかかる期間は?治療の流れ、重症化したときの対応を解説

この記事の目次

電動歯ブラシの方が効果的?ブラッシングのこつ

Q1.歯ブラシと電動歯ブラシ、どちらの方がより良く歯を磨けるのでしょうか

歯周病の予防には、ブラッシングがすごく大切になってきます。

最近では、「電動歯ブラシはより効果的ですか?」といった質問が多いのですが、ここで強くお伝えしたいのは「買っただけで満足してはダメ」ということです。

家電量販店などで安く買えるようになってきている電動歯ブラシですが、磨き方は教えてくれませんよね。

ブラッシング方法を教えられるのは歯科医師だったり、歯科衛生士だったりするので、ぜひ歯医者さんに購入した歯ブラシを持って行ってください。きっとより良い磨き方や使い方を教えてくれるので、その機会を活用していただきたいと思います。

もう一つ、よく質問を受けるのが「うがい薬は効き目がありますか?」という内容ですね。これは、基本的によく磨けていて、さらに仕上げとして使うのであればいいと思います。

日本で市販されているうがい薬に含まれた有効成分は、すごく低く設定されているんです。そのため、うがい薬だけで虫歯や歯周病を予防できる力はないんですね。ただ、使用後はとても爽快感が広がるようにつくられているので、きれいになったような気持ちになります。

まずは歯ブラシの毛先で汚れを払いのけてから、うがい薬などを使用するということが、大切なポイントになってきます。

Q2.磨き方のこつを教えてください

歯の生えぎわにブラシの先があたっていなくては意味がありません。よく鏡を見ながら、あたっていることを確認してブラッシングを進めてください。

誰でも前歯の表面はよく見えるので上手です。しかし、奥歯の舌側や上顎の側は見えにくく、磨き残しが起こりやすいのです。鏡で見ようと思っても洗面台の照明が暗いと奥歯の方はよく見えません。そのときには明るい部屋で手鏡を見て、歯ブラシがあたっているかを確認すると上手になります。

どんな歯ブラシでも大きく往復するブラッシングはダメです。鏡を見て「小刻みに」「丁寧に」が基本です。

歯と歯肉の間にしっかりとあたっているかどうかは、なかなか自分では確認できないこともあるので、できれば歯医者さんに行って歯科衛生士さんに習うといいと思いますね。

専門家に習えば歯ブラシや電動歯ブラシの性能を十分に引き出すことができると思います。

「やわらかめ・ふつう・かため」どの歯ブラシを選ぶべき?

Q3.どのような歯ブラシを選ぶといいのでしょうか?

自分でどの歯ブラシを選んでいいのか分からないという方におすすめするのは「ふつう」というかたさです。

「やわらかめ」の歯ブラシは磨き心地がよいので、選ばれる方が多いんですが、歯の汚れ・デンタルプラークは意外とかたいので、やわらかいブラシでは取れないんですね。売り場で「やわらかめ」の歯ブラシが多いのは、販売戦略を反映しているからという話を聞いたこともあります。

「かため」の歯ブラシだと痛くて嫌だという方もいらっしゃると思うので、「ふつう」の歯ブラシを選んでいただくのがポイントです。

Q4.「かため」は歯茎に悪いのでしょうか?

「かため」の歯ブラシが悪いということはありません。その逆で良くて、汚れを取りやすいんです。ただ、痛いから実際には「あまり熱心にやれない」となってしまっては元も子もありません。

おすすめとしては、「ふつう」の硬さから入って、だんだん歯肉が固まってきて磨いても痛くなくなってきたら、「かため」の歯ブラシに移行していく。

そうすると、短い時間で効率よく、汚れを取り除けるようになってくると思います。「ふつう」でも痛かったり血が出るなら、すでに歯周病ですから、一度歯科医院を受診することをおすすめします。

Q5.歯ブラシの大きさはどれがいいのでしょうか?

歯ブラシ指導の基本は、コンパクトヘッドとよばれる小さめの歯ブラシです。しかし、歯の生えぎわに注意を払うあまり、歯の白い部分の先端、半分がおろそかになってしまう方がいらっしゃいます。

歯の生えぎわも白い部分も全体にきれいにしてください。最近は6列毛の大きめなヘッドの歯ブラシも定番化してきたようです。全体をカバーしやすいので、ぜひ試してもらいたいです。

※Aはコンパクトヘッド、Bは大きめなヘッドでのブラッシング(画像提供:山本松男教授)

平均は3カ月に1本!?日本人は歯ブラシをなかなか変えない?

Q6.歯ブラシを換えるタイミングを教えてください

最近はやりなのが、針のように歯ブラシの先端がとがっている「先細毛」。これは、2週間くらい使用していると、先が“ふにゅっ”と曲がってしまうんです。

2~3週間で換えてくださいとは言わないですけれども、日本人は欧米に比べて、歯ブラシを交換する頻度がすごく少ないんです。平均で3カ月に1本くらいじゃないかといわれています。

望ましいのは1カ月に1回換える、最低でも2カ月に1回くらいは換えることで、同じ歯磨き時間でもよく磨けるようになると思いますね。だいたい200円から300円なので、自分の健康への投資として歯ブラシを買ってあげてください。

Q7.歯ブラシの毛先が開いたタイミングで交換するのでは遅いですか?

歯ブラシの毛先が開いてしまうと、歯と歯肉の境目のところに毛先が届きづらいんです。ご自身では磨けているつもりでも、歯の汚れは残ってしまうんですね。

ですから2カ月に1回くらいを目安に新しいものに交換して、また違うブランドの歯ブラシを選ぶなどして、自分が磨きやすい歯ブラシを見つけるようにするのも、よい工夫です。

Q8.歯間ブラシやデンタルフロスはどう使うのですか?

歯ブラシは歯列の表面と裏面に届きますが、歯と歯が隣り合っている面には毛先が届きません。デンタルフロスは30cmくらいに切り、両手で使いますが少し難しいので、最近ではF字やY字の柄がついたものが市販されています。

同じように歯と歯の間を清掃するのに歯間ブラシもあります。歯と歯の間は隙間がバラバラで歯並びによってもやりやすさが違うので、ご自身でやりにくいなと思ったら、やはり一度歯科医院で相談するといいでしょう。

※次の記事「唇が乾燥して痛い!どの診療科に通うべき?

昭和大学 歯学部 歯周病学講座
山本松男教授監修
経歴・プロフィール

平成4年  東京医科歯科大学歯学部卒業
平成8年  東京医科歯科大学大学院修了・博士(歯学・歯周病学)
平成9年  米国アーカンソー州立医科大学内分泌部門・骨粗鬆症センター(ポスドク)
平成12年 鹿児島大学歯学部助手(歯周病学)
平成14年 鹿児島大学生命科学資源開発研究センター助教授
平成17年 昭和大学歯学部教授(歯周病学)

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執筆者:歯の教科書 編集部

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