【教授に聞く】スペシャルニーズ歯科とは?生涯にわたって見守る歯科治療の提供

スペシャルニーズという言葉をご存じですか? 精神的、あるいは身体的な障がいを抱え、特別な支援を必要としている方々がいます。そうした支援を必要としている方々を表す用語としてスペシャルニーズが用いられ、近年日本でも浸透してきました。

日本大学・歯学部・小児歯科学講座・白川哲夫教授は、スペシャルニーズの子供たちに向けた治療にも力を入れています。

記事内では、スペシャルニーズ歯科とはどういった分野なのか、治療はどのように行われているのか、大学で行われている治療の特徴などについて解説していただきます。

※前回の記事「キスで虫歯はうつる?子供が虫歯になりやすい生活習慣や癖

この記事の目次

支えを必要とする治療!スペシャルニーズ歯科とは

Q1.スペシャルニーズの方々に向けた歯科治療とはどのような分野ですか?

スペシャルニーズという言葉がだいぶ日本でも普及してきて、大学の中にもスペシャルニーズ歯科という分野ができてきています。

では何がスペシャルニーズ歯科かというと「基本的な診療のアプローチだけではうまく治療に入ることができない」、あるいは「治療を成功させづらい」といった方々に向けた分野ですね。

生涯にわたって見守る!スペシャルニーズ歯科の支え

Q2.スペシャルニーズの方々に向けた治療はどのように行われるのでしょうか?

スペシャルニーズ歯科では、身体面や精神面なども考慮した上で、さまざまな工夫が必要なんです。

もともと骨格が成長しづらいお子さんもいますし、脳性麻痺などがあって重度の心身障がいで寝たきりになってしまっている子もいます。自分で寝返りを打てない子たちは、そのまま成人になるわけですが、背骨もそうですし、顎の形や噛み合わせなども変化してしまうわけです。

そういった方々には、どのような歯科医療が適切なのか。例えば、虫歯を治療しても、実は歯としてうまく噛めていないという人もいるんです。

さまざまなハンディキャップを背負った患者さんに、「生涯にわたって専門的な治療を提供できないか」と…。子供のときから診ている患者さんがだんだん大きくなり、大人になったから「さよなら」ということではなく、小さいときから担当が変わらず、大人になってからも担当を継続するといった対応も含まれます。

例えば、うちは小児歯科ですけれども2,3歳から治療を初めて、今では50歳になっていらっしゃる患者さんもおられます。

細分化された担当分野!大学病院での治療

Q3.治療の工夫などを教えてください

楽しくコミュニケーションを取りながら治療を進めるということが困難な場合もありますが、工夫しながらコミュニケーションを取れるだけ取って、「やれるだけのことはやりましょう」ということになります。なかなか大変は大変なんですけれども。

それから、全身麻酔下での治療があります。これは小児歯科の担当医が麻酔をかけるのではなく、歯科麻酔の認定資格を取得した先生が担当します。そして我々は、歯科治療を担当する。こういった治療はいたるところ、どこでもできるわけではないので、大学病院の役目の一つだと考えています。

また最近では、地域で行政の支援を受けて、全身麻酔、あるいはほとんど眠った状態にしてしまう静脈内鎮静法を活用し、ストレスの少ない治療を行えるようになっています。

そういった面から見て、スペシャルニーズの方々への歯科治療の提供は、いい方向に向かっているのではないかと感じています。

まとめ

大学が役割の一つとして考えている治療について特徴があることが分かりました。

また各自治体・地域でも、麻酔方法の工夫などによってストレスを抑えた治療を行えるようになっているようです。

歯医者さんが、患者さん一人ひとりに合った治療を届けるために行っている取り組みの一端を垣間見ました。

※次の記事「赤ちゃんの歯磨きはいつから?大学教授が教える正しいケア

日本大学 歯学部 小児歯科学講座
白川哲夫教授監修
経歴・プロフィール

日本大学 歯学部 小児歯科学講座 教授
【略歴】
1986年~1989年:北海道大学歯学部附属病院 助手
1989年~2002年:北海道大学歯学部附属病院 講師
2002年~2003年:北海道大学歯学部附属病院 高次口腔医療センター 助教授
2003年~2006年:北海道大学病院 高次口腔医療センター 助教授

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執筆者:歯の教科書 編集部

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