【教授に聞く】0~18歳まで通う?小児歯科に通う前に知りたいこと

日本大学・歯学部・小児歯科学講座・白川哲夫教授にインタビューを行いました。

白川教授には、「小児歯科とはどれくらいまでの年齢を指すのか」「一般診療とは何が違うのか」などを伺い、これまで知ることのなかった小児歯科という分野の背景を語ってもらっています。

子供のために歯医者さんを探している方にとって、小児歯科がどういった場所なのか分かりやすい内容となっています。

この記事の目次

0歳から18歳くらいまで!年齢の幅が広い小児歯科

Q1.小児歯科とはどういった診療科なのか教えてください


小児歯科が大人と違う部分としてはまず対象の年齢ですよね。小さいお子さんですと0歳から、大きくなると中学生くらいまでです。

しかし、小さいころからの治療を継続的に続けている患者さんですと、高校生くらいまでかかるということもあります。

ですので、延びても18歳くらいまでが小児歯科ということになりますね。その期間に発生するさまざまな疾患に関して、われわれが責任を持つということになります。

虫歯からけが・外傷まで!歯並びの治療も担当

Q2.小児歯科と一般診療の違いは何ですか?

歯科疾患には、まずはう蝕・虫歯、歯周疾患などがあります。それに加えて小児の場合は、けが・外傷といった内容も含みます。

う蝕・虫歯については成人の治療と違いはないです。ただし、お子さんの場合は、子育ての仕方や家庭環境、生活環境といったものが「虫歯のできる・できない」に大きく関係してきます。

それ以外は、歯並び。成人の場合は矯正歯科で担当する分野になるのですが、子供の歯並びにつきまして小児歯科が関わる部分が大きいといえます。ただ歯科矯正科の方は、子供から成人の歯並び治療も担当します。歯並びそのもので考えますと、矯正科の方が“歯並び治療の専門”といえますね。

けれども、我々は子供たちの歯並び、乳歯から永久歯への交換、骨格の発育など、そういったことがダイナミックに変わっていくときに担当しますので、小児歯科特有の治療というものが含まれてきます。

歯医者さんに通う前に!「小児歯科」「小児歯科専門医」の違い

Q3.歯医者さんには「小児歯科」または「小児歯科専門医」と書いてあるところがあります。どう違うのでしょうか?

小児歯科とだけ出ている場合は、厚生労働省が標榜を認めている診療科ということになります。小児歯科という科は、歯科医師免許を持っていさえすれば、誰でも標榜することが可能なんですね。そのため、その先生が「意欲的に子供も見ます」という場合には、標榜してもなんら差し支えないということです。

ただ問題点は、そういった先生が小児歯科専門医が受けたようなトレーニングをどこで受けたのか、それとも意欲、気持ちだけで、小児を担当しようと思っていらっしゃるのか、そこには違いが出てきます。

厚生労働省の方でもいろいろと制度の見直しが進んではいますが、各学会が専門医制度というものをつくっています。今のところは各学会、われわれの場合ですと日本小児歯科学会が専門医制度を持っております。その専門医制度の中で資格を取得すれば、小児歯科専門医を名乗ることができるんですね。

これは、さまざまな試験を受けて、それに合格し、資格を得たということですので、小児歯科の専門性、スキル、能力的に、より頼りがいがあるということになると思います。

制度が発足してから10年以上がたち、多くの小児歯科専門医がいるわけですけれども、都市部に局在してしまっているという問題はあるかもしれません。

麻酔針の前に表面麻酔!痛みへの配慮

Q4.小児歯科の治療は、過去からどのように変化してきましたか

子供たちの治療では極力痛みを与えない治療を心がけ、さまざまな工夫をしています。これにはやはり、材料面の改善が貢献しているかもしれません。歯科治療に適した麻酔薬が普及していますし、いくつか選択肢もあります。

何より粘膜表面に塗る麻酔薬。これは単独ではなく注射薬の前に使用します。粘膜表面に塗って、表面が麻痺したところに針を刺すことで、ほとんど痛みを感じずに麻酔注射をすることができるんです。以前からあったんですけれども、使いやすい表面麻酔薬が出てきていますね。

また、我々の技術も「こんな使い方をするといいよ」といった情報を入手することで、より痛みの少ない治療が可能になってきているのではないかと考えます。

小児歯科の変化!スムーズで手際よい治療が可能に

Q4.小児歯科の分野から新たな技術や治療法が誕生することはあるのでしょうか?

小児歯科に特化して「新しい技術が導入された」とか、「画期的なものが作られた」ということは残念ながらないんですね。

ただ、一般の成人治療と同じですけれど、虫歯になったところを削って、歯に詰める白い材料。これの強度や歯面への接着性などが改善され、持ちが大変良くなっていますね。

子供の場合には乳歯に適した硬さのものもありますし、永久歯では成人と同じ材料を使えばいいので、選択肢も増えています。こういったことが小児歯科に恩恵をもたらしていますね。

光を当てることで固まる材料「光10号」というものがあるんですが、歯科技工で技工物をつくるという分野にとっても革新的でした。昔は、「化学10号レジン」というものを使っていたのですが、暑いシーズンだとすごく早く固まるんですね。

限られた時間の中で練和して、虫歯を削った穴に詰めるという治療には、すごく技が必要でした。最近ですと光を当てるまであまり硬さに変化がなく、光照射すると作用が急速に進行するという材料がありますので、治療操作の成功率が高まったといえます。

それから、フロアブルレジン。かなり流動性の高い材質を、ノズルの先端から注入できるようになりました。これも治療成績の向上には貢献しているんじゃないかなと思っています。

小児歯科の場合は、短時間に手際よく治療を進めなければならない。うまくいかないところがあったから、もう一回やり直そうといったことは避けたいものですから、操作性がいいとか、材料自体の特性良くなったというのは非常に恩恵として感じているところです。

まとめ

0歳から18歳くらいまでの患者さんを見ることができるのが、小児歯科という分野だと理解できました。また、一般診療に加えて、けがや歯並びに関してまで、幅広く対応しているといいます。

最初に選んだ歯医者さんが、子供が長く通う場合になるかもしれません。事前に歯医者さんの情報をよく確認することも大切ですね。

※次の記事「子供の虫歯はなぜ白い!?子供と大人で違う、虫歯の色のメカニズム

日本大学 歯学部 小児歯科学講座
白川哲夫教授監修
経歴・プロフィール

日本大学 歯学部 小児歯科学講座 教授
【略歴】
1986年~1989年:北海道大学歯学部附属病院 助手
1989年~2002年:北海道大学歯学部附属病院 講師
2002年~2003年:北海道大学歯学部附属病院 高次口腔医療センター 助教授
2003年~2006年:北海道大学病院 高次口腔医療センター 助教授

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執筆者:歯の教科書 編集部

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